布に自分でペイントできる「染めQ」は、服やバッグなどの布類、革製品などに吹き付けるだけでオリジナルの製品へ仕上げられます。洗濯しても色落ちせず、塗料が長持ちします。
ただし、染めQが万能なわけではありません。染めQの弱点はアルコールです。
万が一失敗した時には「染めQ専用リムーバー」で簡単に色落ちできるのですが、市販のアルコール製品もリムーバーと成分が似ています。
今回は、染めQを使ったときの弱点やその原因について、まとめて解説します。
染めQを使った布が色落ちするのはアルコール類

染めQは、説明書にも書いてあるとおり洗濯しても色落ちはしません。しかし、アルコールや専用リムーバーをつけると色落ちします。
染めQや専用リムーバーには、有機溶剤が含まれています。有機溶剤にも種類は様々ですが、どれも揮発性が高く、油類や汚れを溶かしやすいです。
アルコールも有機物で、有機溶剤と成分が似ています。有機溶剤ほど成分は強くないのですが、水より揮発性があり、汚れを溶かしやすいのです。
ちなみに、消毒用のアルコールを手のひらに伸ばすとすぐ蒸発するのは、揮発性によるものです。
布類なら汚れたら洗濯できますが、洗濯ができない革製品などは、汚れたら乾いた布で拭き取ります。
しかし「すぐ乾くから」と揮発性に期待してアルコールで拭き取ると、せっかく色を付けた染めQまで拭き取ってしまうのです。
たまに除菌用ウェットティッシュなどで拭く人もいますが、アルコールが含まれていると表面の塗装まで剥がれます。
私も染めQのHPを少し拝見すると、革製品に染めQで染めた後には「溶剤が含まれているクリームやオイルは使えない」と書いてありました。
革製品は定期的にクリームやオイルでメンテナンスをしたいところですが、成分を選ばなければならないのですね。
「簡単に色付けできるものは、色落ちも簡単にできる」という声もあります。まさにその通りで、簡単なものには必ず弱点があるのですね。
染めQを吹き付けた布はゴワゴワしやすい

染めQの仕組みは、とても細かいナノ粒子を吹き付けることで、布や素材に染料を固めています。
染めQの場合は顔料をベースに、樹脂と合わせて作られています。顔料は表面で固まりやすく、ゴワゴワ感が残りやすいです。
顔料の性質は、水との相性が悪く溶けにくく、布の繊維まで塗料が浸透しにくいです。イメージとしては上からペンキを塗りつけている感じですね。
ナノ粒子が布の繊維にまで届いたとしても繊維の表面に固まっているため、布の表面はパリッとしています。これがゴワゴワの原因です。
もし綿素材で柔らかい生地のTシャツ全体に染めQを吹きかけると、Tシャツがパリパリになってしまいます。
今この文章を書きながら、私が中学時代、スポーツ大会でクラスの横断幕を作っていたのを思い出しました。
当時使っていたポスカも顔料のひとつです。あのときの横断幕もなんだかパリパリしていました。
また、染めQにはナノ粒子を固めるための樹脂も含まれていまて、布に鮮やかな色をしっかり固着させられます。
しかしその反面、布の柔らかさや質感が失われます。そのため、水を吸い込みやすい、またはスエード調のような表面に風合いがある布には向いていないのです。
布の風合いを残したいなら、黒いボトルで一般的な「染めQエアゾール」よりも、ピンク色のボトル「ジーンズ染めQ」を使ったほうがいいです。
「ジーンズ専用?」と思ってしまいますが、綿や麻など、布全般に特化した染めQです。布に塗料がなじみやすく、染めQエアゾールほどゴワゴワ感が少ないです。
布の風合いも変わりにくいため、自分なりのファッションを楽しめます。
元の布と染めQの色が極端に違うと、つい厚塗りしてしまう
染めQを使った人の声では、ゴワゴワが気になる人、気にならない人で分かれます。
実際に使ってみた人の声を聞いていると、ゴワゴワが気になる人には、なかなか新しい色に染まらず厚塗りしてしまったケースも多いです。
厚塗りしてしまう原因のひとつは、元の布(素材)と染めQの新しい色が極端に違うことです。
元の布(素材)が白っぽかったり染めQの色と同系色だったりすると染め変えやすいですし、染めQの量も少なくすむのでゴワゴワ感は気になりません。
しかし、暗い色から明るい色、または奇抜な色から白色へ染め変えるとどうしても元の色が残りやすいのです。
それに、染めQはペンキとは違い、一度薄く塗っただけではなかなか思った色が付きません。
なんとかして元の色を消そうとして何度もスプレーしていると重ね塗りや厚塗りになっていきます。その結果、布の風合いが失われて、ゴワゴワ感だけが残ってしまうのです。
厚塗りしすぎて途中で染めQが足りなくなり、買い足す人もいます。スプレー1本あたり2,000円以上するので、経済的とは言えませんね。
私は染めQを使ったことはないのですが、同じ「染める」ではヘアカラーが似ています。明るい髪色が好きで、よく美容師さんと髪色の相談をしています。
美容師さんからは、「白い画用紙に赤や黒を塗るのは簡単だよね。でも、黒い画用紙に赤や白を塗っても、黒っぽさが残るんだよ。」とブリーチの必要性を説明されます。
というのも私、過去にブリーチでしっかり脱色ができず、ヘアカラーを失敗したことがあるのです。
髪色をピンクにしたいと思って別の美容師さんにお願いしたとき、実際に仕上がった色はピンクではなく、オレンジに近かったのです。
今思うと、ピンク色を入れる前のブリーチで脱色が足りなかったのです。黄色っぽさが残っているのにピンクを入れて、その結果オレンジ色になってしまいました。
そう、元の色を脱色せずに新しい色へ塗り替えるのは難しいのです。
元の色をしっかり抜いてから新しい色へ染め変える、あるいは同系色の色を選んだほうが、染めQを大量に使わなくても想像どおりの色味に仕上がりますよ。
使い込んだ布に吹きかければ硬さを再現できる
染めQは、どちらかというと硬い布や革製品の方が向いています。
使い込んで柔らかくなってしまった布に吹き付けることで、逆にハリ感が戻って、ノリ付けされたような感じに生まれ変われるからです。ゴワゴワ感を逆手に取るのですね。
特に帽子(キャップ)やカバンなど、厚みや硬さがある布にはゴワゴワ感が有利に働きかけます。
元々硬い布だった帆布に吹きかけて、「またしばらく使えそう。」と喜ぶ人もいます。お気に入りのグッズが新品に戻ったような気分になり、より愛着を持って長く使えますね。
布の風合いを残したいなら白色に染料を使う
布を染める塗料には、顔料以外に「染料」があります。布全体を染めるなら、白色に染料を使ったほうがキレイに染まります。
顔料は水との相性が悪いとお話ししましたね。対して染料は水との相性がよく、染め上げた布は手触りが変わらず風合いもほぼそのままです。
染料で染めるときは、水に溶かして布を直接漬け込んで、布の繊維まで色を浸透させます。ただ、水との相性がいい反面、洗濯を繰り返すと色落ちします。
私も、デニム生地と白いタオルを一緒に洗濯してしまったとき、タオルがうっすら青色になったことがあります(笑)
すでに色がついている布は難しいですが、白や生成り色なら布全体にしっかり色が浸透します。
染めQを吹き付けた布は洗濯できる

染めQを吹き付けた布は、通常の衣類と同様に洗濯ができます。
金や銀などは徐々にラメが落ちていくものの、ラメが入っていないタイプは問題ありません。
また、染めQを吹き付けすぎてゴワゴワした布も、洗濯すれば少し落ち着きます。
まとめ

- 染めQはアルコールに触れると色落ちする
- 染めQで顔料をベースに作られているため、布にスプレーしすぎるとゴワゴワ感が生まれる
- 元の布と染めQの色があまりにも異なると、元の色味がなくなるまで厚塗りしてしまう
- 使い込んで柔らかくなった布に染めQを使うと、逆に硬さやハリ感が戻る
- 布専用の染料は洗濯で色落ちしやすいが、風合いを損なわずゴワゴワ感もない
- 染めQは洗濯しても色落ちしない
コメント