化学を勉強するにあたって、有機と無機の違いの理解は必須です。
この違いを理解しないまま、勉強を進めると無機化学、有機化学の分野の内容についてよくわからなくなってしまい化学が苦手になってしまいますよ。
でもその違いをわかりやすく説明できる先生って、なかなかいませんよね。
わかりやすく考えるなら「無機は4分類あり、それ以外は有機である」と覚えましょう!それ以外の見分け方も、根本に立ち返ってわかりやすく解説していきます。
また、有機と無機を区別することで生まれた異なる2つの栽培方法や、有機と無機の良いところをあわせ持った新しい素材「有機-無機ハイブリッド」を紹介します。
有機と無機の違いだけでなく、どのように使われているのかを知ることでより深い理解ができます。友人にも、わかりやすく説明ができますよ。
有機物と無機物の違いをわかりやすく説明!
有機物と無機物の違いをわかりやすく説明すると、炭素を含むか含まないかです。しかし、例外も存在します。
具体的には、炭素単体、一酸化炭素、二酸化炭素、炭酸塩、炭酸水素塩、シアノ化合物などがあげられます。
これらは、炭素を含んではいるのですがすべて無機物となっています。
これらの「例外」はすべてを暗記する必要はありません。無機物を基準として考えることで有機物と無機物を区別することは簡単です。
どういうものが無機物に分類されるのかを理解することができれば、有機物と無機物の違いの区別が簡単にできるようになり、テストの点数が上がること間違いなし!
どうして無機物を基準として考えるのかというと、莫大な種類が存在している有機物に比べると無機物の種類は少ないので分類の仕方がわかりやすくなるからです。
無機物は、酸化物、水酸化物、オキソ酸、塩の4つに大きく分類することができます。
また、この4つにあてはまらないものであっても単体であればすべて無機物とすることができます。
どういうことなのか、この4つの分類説明とともに解説しますね。
- 酸化物
酸素で酸化された物質のこと
例…酸化鉄 - 水酸化物
水酸化物イオン(水素と酸素)を持つ化合物のこと
塩基性塩とも呼ばれ、水に溶け電離すると「塩基」になる
例…水酸化ナトリウム - オキソ酸
酸素原子があるもの
例…硫酸、硝酸、リン酸 - 塩(えん)
酸性やアルカリ性の物質を中和したときにできる物質
例…塩化ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム
酸化物の「酸化」がピンと来ない場合は、サビてしまった金属を想像してください。
金属が酸素と結びつくことでサビてしまうのです。サビた金属も立派な酸化した金属といえるのですよ。
「水酸化物」がよくわからない場合は、基本的に「水酸化物」と名前についているもののことと考えておけば大丈夫です。
水酸化ナトリウムが分かりやすいと思います。実は私たちが毎日使う石鹸はこの水酸化ナトリウムと水、動物植物油脂を主な原料としてできているのです。
「オキソ酸」は、もう少し詳しく説明すると酸素原子が中心原子や水素と結合することで酸となる化合物のことです。
オキソ酸の例をみてみると、名前に「酸」とつくものが多いとわかりますね。
最後に「塩(えん)」ですが、食べ物の塩ではないので注意してくださいね。
こんな4つにあてはまるかなんて区別できないよという方も、名前だけでも覚えておけば判断材料の一つとなりわかりやすくなりますよ。
化学的な視点から有機物と無機物を区別してみよう
有機物と無機物の区別の仕方としてもう一つ、化学的な考え方で区別をするというものがあげられます。有機物と無機物は、異なる化学的性質をもっているのです。
2つの物質の化学的な違いとして、結合の種類や融点、反応速度などの違いがあげられます。
有機物 | 無機物 | |
結合 | 共有結合 | イオン結合 |
電導性 | 通さない | 通す |
融点 | 低い | 高い |
燃焼性 | 高い | 低い |
常温での反応速度 | 遅い | 早い |
共有結合は原子間では互いの電子を共有しているため強い結合を有していますが、分子同士は分子間力という弱い力で引っ張りあってできる結合です。
つまり、原子同士の結合は強く、分子同士の結合は弱いのです。この結合の違いが有機物の性質に大きく影響しています。
まず、原子同士の結合が強いことは、水に溶かしても電気を通さないという性質に影響を与えています。
どうして原子同士の結合が強いと電気を通さないかというと、水に溶かしても原子同士がバラバラにならないからです。
原子同士がバラバラになってしまうと、電気を通しやすい性質に変化するのです。
そして、分子同士の結合が弱いことは、融点が低いという性質に影響を与えています。
分子同士が結合することで物質は固体としての形を維持しています。
分子同士の結合が弱いと熱に弱くなり、低い温度であっても結合がほどけてしまうのです。
物質の固体は形が維持できなくなると液体になりますよね。そのときの融点は無機物の方が低いんですよ。
ではイオン結合の説明ですが、これは静電気的な強い力でなされる結合です。一般に結合により陽イオンと陰イオンが結びついてできた固体をイオン結晶と呼びます。
そんな、強い結合力をもつイオン結合なのですが、水に弱いという性質を持っているのです。
それが影響して水に溶けると陽イオンと陰イオンは離れてしまい電気を通しやすくなるのです。
しかしイオン結合は熱には強いため融点は高くなります。
混合物なら簡単に2つの区別ができる!
ここまでは純物質のときの有機物と無機物の見分け方を紹介してきましたが、ここからは混合物のときの見分け方を説明していきます。
混合物とは複数種類の物質を合わせた物質のことを指します。
例えば、「塩」と「水」が混ざると「塩水」になりますよね。この「塩水」が、混合物です!
混合物の場合は、加熱したときに物質が焦げたり、物質から二酸化炭素が発生したりすればその物質は有機物ということができます。
有機物の中には炭素があるため、その炭素と空気中の酸素が加熱することによって反応し、水や二酸化炭素となってでてくるのです。
有機物の例として、木やろうそくがあげられます。そこで木は炭や焦げが出ますが、ろうそくはこれらのように目で見えるものは発生しませんよね。
このように、燃やしても炭や焦げが出ない物質も存在するのです。ですので、二酸化炭素が発生するのかを判断の材料とする方が確実です。
ちなみに、自宅でもできる実験としては、塩と砂糖を使ったものをおすすめします。
塩と砂糖を加熱してみてください。すると、塩は何も起こらないのに対し、砂糖は溶けたり焦げたりといった変化が起きます。
私も学校で実験したことを覚えています。これであればあなたも簡単に理解できるのではないでしょうか。
この結果から塩は無機物、砂糖は有機物と判断することができますね。
今と昔で定義が違った?!例外はすべて昔のなごり!
ではどうしてこのようなわかりにくい「例外」が存在してしまったのでしょうか。これには昔の、今とは少し違った有機物の定義の仕方が関係しています!
今は、有機物も無機物も人間の手で作ることができますが、昔はそうはいきませんでした。
だから昔の人は生体が作り出す化学物質を有機物、そうでないものを無機物と定義していました。
例えば、人間がサトウキビから作る砂糖は有機物、生物に由来しない水や鉱石、二酸化炭素は無機物といった区別をしていたのです。
現在は有機物も人間の手で作ることができるようになったためこの定義はすたれていきました。
しかし昔、無機物とされていた物質がいまだに無機物とされているものが「例外」となって私たちを苦しめています。
有機栽培と無機栽培の違いで野菜に変化が!
有機物と無機物との違いはどのような場面で区別されているのでしょうか。今回は野菜の栽培の事例を見ていきましょう。
野菜の栽培方法には、有機栽培と無機栽培という有機物と無機物の違いを活かしたものがあります。
有機栽培とは有機肥料を使って野菜を育てる方法のことを、無機栽培とは化学肥料などの無機質肥料を使って野菜を育てる方法のことをさします。
有機肥料は主に土の栄養を補充するために使用される肥料となっています。利用することにより土壌の改良効果が期待されます。
しかし、微生物の働きによって効果が期待されるので即効性は低い上に量の調整が難しいです。また、自然の素材を原料としていることから大量生産が難しいです。
また、有機肥料だけで育てるとどうしても、野菜の大きさや形が不ぞろいになってしまうので、無機栽培に比べるとより多くの手間と時間がかかります。
それに対し無機肥料は即効性が高く、大量生産もできますが、土壌の改良効果はなく、使用しすぎると野菜がしおれたり枯れたりしてしまいます。
どちらにもメリット、デメリットが存在するため用途によって使い分ける必要性があります。
主に有機肥料はその特性上、野菜本来の質に着目した栽培に向いているのに対し、無機栽培は同じ品質の野菜をたくさん生産したい際などに有効な栽培方法となっています。
実は全然違う?!有機栽培と自然栽培を比較!
ここで化学物質を用いないという点で有機栽培と似ている自然農法と比較してみましょう。
自然の力を活用しているか否かによって有機栽培と自然農法は分類することができます。
有機栽培というのはあくまで有機肥料を用いるというだけであって人の手を加えて育てられていますのですが自然農法は違います。
自然農法は、農地を耕すことも、草を抜くことも、肥料を与えることもしない、当然、農薬も与えないで野菜を育てる方法のことをいうのです。
自然の力を如何に活かすのかを大切にする自然農法は長い間、行われており、人によって栽培方法には差があるためその種類はたくさんあります。
とはいえ、有機栽培も化学肥料をいっさい使わない農法となっているため、安心、安全な野菜を育てることができます。
有機と無機との違いを区別することは、用途にあわせた使い方をするためには重要なことなのです。
有機-無機ハイブリッドは万能素材!
有機-無機ハイブリッドとは、2種の成分を分子レベル又はナノレベルで組み合わせることで2つのメリットの相乗効果を狙う目的で使われる材料です。
私がさきほど説明したように、有機物と無機物には、電気の通しやすさや融点、燃焼性、常温での反応速度に関して正反対の性質があります。
そうすると、場面によって有機物と無機物を使い分ける必要性が出てきますよね。
それが今、有機と無機のハイブリッド化が進めば、互いの特性を補い合いより多くの場面において相性の良い素材を作ることができるようになるのです。
ハイブリッドによってお互いの力を引き立てあうのですね。
有機-無機ハイブリッド素材が太陽電池に!
今、有機-無機ハイブリッド素材を太陽電池に活用できないかと研究開発が進められています。
ここでは、そんな有機-無機ハイブリッド素材の太陽電池への活用事例について紹介していきます!
現在、太陽電池は無機物を利用して生産されています。しかし、発電コストの問題や環境への負荷への問題から有機物を利用した太陽電池の開発が進められてきました。
有機物を利用することで発電コストや環境負荷の低減に成功しました。
しかし、太陽光がエネルギーに変換されるときの効率(光電変換効率)や、有機-無機ハイブリッド素材そのものの耐久性が優れないなど、問題も見つかりました。
そこで有機-無機ハイブリッド素材を、活用することで有機物と無機物、互いの利点を生かし合い、私たちの求める太陽電池の開発を行うことができるようになるのですね。
まとめ
- 有機物と無機物は炭素を含むか否かで区別されるが例外が存在する
- 無機物は、たいてい、酸化物、水酸化物、オキソ酸、塩の4つに分類される
- また、有機物と無機物は結合の種類や融点、反応速度が異なる
- 混合物であれば、燃えたときに焦げや二酸化炭素が発生したものが有機物質で、それ以外が無機物である
- 昔は生物から生み出される物質のことを有機物と呼んでいたことが影響して、現在でもいくつかの例外が存在している
- 有機栽培は有機肥料を、無機栽培は化学肥料を使って野菜を育てる農法である。
- 有機栽培の方が育てるのは難しいが、化学肥料を使わない分、安心、安全な野菜を育てることができる。
- ちなみに有機栽培と自然農法はどれだけ自然の力に頼っているかによって区別される
- 有機無機ハイブリットはこの正反対の成分を合わせて互いの良い部分をあわせもつ材料である
- 有機-無機ハイブリッド素材は太陽電池の素材の候補として研究されている
有機物と無機物の違いをさまざまな視点からわかりやすく説明してきました。
炭素を含んでいるかいないかだけで判断しようとすると2つの物質の区別は難しいです。だからこそ、わかりやすく教えてくれる人が少ないです。
しかし、昔の定義について考えてみたり、無機物がどのように分類されるのか、互いの性質にはどのような違いがあるのかを知ったりすることで少し区別する方法がわかりやすくなりましたね。
有機物と無機物の違いは身近にあるものにも利用されています。「どうしてこれは有機物質でできているのだろう」と考えてみてもいいかもしれません。
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